ニューヨーク阿房列車 〜べべ・マリーを訪ねて〜



駅構内です。1860年代建造。ビスクドールよりも古いです(但し現在の駅舎は1913年に改装・修復)。
この駅だけでもニューヨークに来た、という雰囲気がたっぷりで、色々ご紹介したいのですが、
すっかり興奮していたのと、待ち合わせに遅れそうだったのでろくな写真がありません。
もうMOMAへ話しを進めます。
今回MOMAに立ち寄れたのは全くの偶然です。限られた時間しかなかったので、無理だろうと思っていました。
でも、もしかして、という気持ちもあり、カメラを持参して本当によかったです。
たまたま用事のあったホテルがMOMAの斜め向かいだったのです。どうせ行くならタクシーでと思っていたので、MOMAと
待ち合わせのホテルとの距離感を知ろうとも思っていなかったのです。ホテル到着後、少し時間が空いて「MOMAならすぐそこよ」、
と云われた時には鳥肌が立つ思いでした。
見学時間は僅か45分と限られていましたが、観光客で込み合う日曜の美術館を走り抜けてマリーを探しました。

4階だったか5階だったか・・・ワイエスの"Christina's World" (1948)の前を通り抜け、右に角を曲がったところで彼女は忽然と姿を現しました。

一つの vitrine、ガラスケースに並んでいたのは、
フリーダ・カーロ "Self-Portrait with Cropped Hair"(1958)、
ハンス・ベルメール "The Doll" (1935-37)、
アンドレ・ブルトン "Poem-Object"(1941)、
そしてジョゼフ・コーネルが2ピース "Untitled (Dieppe)"(1958)と、Untitled (Bebe Marie) (early 1940s)。
この空間だけでも飽かずに一日中ずっと見ていられそうです。
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正直、これほどのものとは思ってもみませんでした。最初の感想は 「写真と全然別物」。
とはいえ、わたしの撮影した写真は反射が著しく更に遺憾なのですが、ご容赦ください。
でもどっちにしても無理です無理です。どんな写真でも実物から受ける圧倒的な何かは感じられないだろうと思います。
実物のマリーはジュモウの人形であるのに、ジュモウというブランド名さえが取るに足らないことのようで、コーネルの存在に圧倒され消え失せていました。
時の流れを意に介さない、独自の時間の中で空間を見つめ、完全なコーネルの「永遠の所有物」であると思いました。
少なくともわたしは、マリーの中にコーネルの存在を痛いほど感じました。
今では誰も触れることの出来ない、とてもとても遠いところに彼女は居ました。何かを必死に見つめているようで、実は何も見ることを望んでいないような。
あまりにも高貴で、まるで写真に撮られるのを拒んでいるかのようでした。
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これがクロースアップの精一杯です。ペイントの飛沫がお顔にも目にも散っているのがお分かりいただけるでしょうか。
小枝と同じにキラキラと神秘的に光っていました。
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コーネルはとても内気な人だったそうで、生涯独身でしたが、ローレン・バコールやグレタ・ガルボなど、現実には手に届かない、高嶺の花的女性に淡い恋心を寄せていたと云われます。晩年は特に隠遁癖が高じ、ニューヨーク州を離れることが殆どなかったそうです。
そういう意味ではマリーも決して手の届かない永遠の少女的存在だったのではないでしょうか。だからこそ、殆ど宗教像のような無垢で孤高の「誰も近づけない」印象が伴うのかもしれません。
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コーネルのアッサンブラージュは殆どが架空の少女や敬愛する女優、バレリーナへのイマジナリー・プレゼントとして作成されたと聞きます。
これらの箱群は実際に触って遊んでもらえるように作られています。アートというのは二次的目的だったようです。
同時にコーネルは、嘗て誰かが大切にしていたもの、でももう誰も振り向きもしないようなオブジェクト(悪くいえばがらくた)を古本屋、古道具屋などで探し、
それらの「過去の遺物」を箱に閉じ込めておくことを好んだようです。
べべ・マリーは、少女への贈物ともとれますが、実は憧れの少女をそのまま箱に閉じ込め(てしまっ)たアッサンブラージュとして大変興味深い存在ではないでしょうか。
「鬼火」の主人公に似た過去への郷愁、執着を表す感情ですが、コーネルはそれをオブジェクトで固形化させました。 時の流れに対するささやかな、でも偉大な抗戦です。
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さて、他の展示品ですが・・・すっかりべべ・マリーの虜となってしまったのと、タイムリミットのせいで殆ど何も見ておりません。
MOMAにはゴッホの「星月夜」やダリの「記憶の固執」があるのですが・・・
それでもピカソやRothko(好きなのです)、ポップ・アートはチラチラ見てきました。
所蔵約15万点のMOMA。べべ・マリーが常設展示されているのかどうか不明ですが、僅かな時間の間に出会えたこと、とても幸運でした。また会いに行こう、と誓いました。
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これで阿房列車ニューヨークを終わります。
お粗末様です。
写真は帰る直前、グランド・セントラル・ステーションの向かいの通りから写したクライスラー・ビルディングです。
2007年現在、ニューヨークでエンパイア・ステート・ビルディングに次ぐ高さを誇ります。
帰りのメトロ・ノースは9時7分発。この時期ニューヨークは9時になっても明るいのです。
夜12時には無事おうちに着きました。
最後になりますが、マリーの号数は7か8くらいでした。無意味な補足ですね。
後記:2007年7月現在、Bebe Marieは5階、ギャラリー12に展示されています
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べべ・マリーについては以前 Read it in Books に『コーネルの箱』として紹介しております。
Dedicated to: 本の存在を教えてくださったけろたさんと、MOMAのコレクション蔵本をご紹介くださった塚人さんに。
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